以前、畳には「目」がある事をこのブログで書きましたが、
今回は、畳表の「ヒゲ」について書いてみたいと思います。
畳表の「ヒゲ」は「耳」とも呼ばれており、
畳表の善し悪しを判断する基準になったり、
将来的にこの畳表はどのように退色するのかなど、
その畳表の特徴を知るための様々な情報が詰まっています。
また、捨ててしまえばただのゴミになってしまいますが、
有効活用すれば優れものグッズにもなるのが畳表の「ヒゲ」です。
いったいどんなモノなのでしょう?
畳になってからは見ることが出来ない「ヒゲ」
「ヒゲ」または「耳」と呼ばれる部分は、畳を作る工程で
切り落としてしまう端っこの部分です。
まだ畳になる前の畳表(たたみおもて)の時にしか見ることが出来ません。
写真のような状態で畳表は送られてきます。
この上下の白っぽい部分が「ヒゲ」です。
畳表のグレードを選ぶ際の目安になります。
熊本のい草農家さんは、収穫したい草を長さの違いで数段階に選別します。
長さが短いい草は格安品や普及品、長さの長いい草は上級品や高級品といったように
選別された後に畳表として織られてゆきます。
「ヒゲ」を並べてみました。左側が高級品のヒゲ、右側が普及品のヒゲです。
白っぽい部分がい草の根元、根元よりも突き出ている部分がい草の穂先です。
長さの違いは一目瞭然です。
しかし、長ければすべて良いという訳ではない所が天然素材を扱う難しさでもあります。
畳屋の目利き力が試される
私たち畳屋が、数ある畳表の中からどの畳表を仕入れようか決める際に
「ヒゲ」の部分を見て、時には握ったりしながら選んでゆきます。
表替えをしたお客様から、数年後に裏返しのお依頼をいただいた時に
綺麗な飴色になっていれば自分の目利きは間違っていなかった!と自信になります。
畳表のグレードの差(違い)が出るのは日に焼けてから
畳は青々としている期間よりも、日に焼けてからの方が長く使用しますので、
日に焼けてからが勝負といいますか、重要になってきます。
数年後の日に焼けた畳を想像しながら「ヒゲ」を見て、触りながら畳表を選んでいます。
切り落とされたヒゲからも当然新しい畳の良い香りがします。
このヒゲをクルクルと丸めて部屋に置けば芳香剤になり、
トイレや下駄箱に置けば消臭効果もあります。
枕元に置いて寝たらグッスリ熟睡できたという報告もあります。
畳表の善し悪しを判断するだけではなく、芳香・消臭効果まであるヒゲですが、
ほとんどの畳屋さんでは捨てられていますので、
下駄箱やトイレに置いてみたいという方は、お近くの畳屋さんに
「畳表のヒゲをください。」と伝えてみて下さい。